【難易度 易:ファイナル編第4回との関連性あり】

ファイナル編第4回のご受講お疲れさまでした。第3問にて証明責任の問題が出題されましたが、今回はそちらをテーマといたします。

「証明責任」という言葉は、民事訴訟法のテキストだけでなく、民法のテキストにもたまに登場するということもあって(民法のテキストにおいては「立証責任」という言葉で登場することもありますが同じ意味です。)、初学者の方から案外ご質問を受けるところです。「証明責任って証拠を提出する責任ですか?」といった具合です。

「証明責任」という字面からすると、初学者の方がこのように考えてしまうことも致し方ない気もしますが、そうではありません。テキストに登場する「証明責任」は「客観的証明責任」とも呼ばれるもので、ブレークスルーテキストにおいては「ある事実が真偽不明の場合に、判決において、その事実を要件とする自己に有利な法律効果の発生が認められないことになる一方当事者の不利益の負担」と定義されています。基本書から引用している定義ですが、初学者の方からすると「??」かもしれません。

訴訟上の和解など当事者の行為によって訴訟が終了する場合には問題になりませんが、裁判所が判決を言い渡すべき場合には、「確定した事実」に対して法令を適用して結論を出します。当事者間で、ある事実の存否につき争いが生じた場合であれば、原則として、当事者が収集・提出した証拠によってその事実の存否を「確定」することになります(弁論主義第3原則)。

しかし、当事者・裁判所の努力にもかかわらず、裁判所がその事実の存否を「確定できない(どっちか分からない)」こともあり得ます。このような状態のことを「真偽不明」といいますが、この真偽不明状態に陥った場合でも裁判所が判決を言い渡せるように導入された概念が「証明責任」です。

以下、「証明責任」の機能の仕方についての具体例です。

①「要件X・Yを全て満たしたらZという法律効果が生じますよ」という内容の法令(条文)があり、そのZという法律効果は原告である甲にとって有利な法律効果(発生したら嬉しい法律効果)である。

②原告甲が、Zという法律効果の発生を導く要件X・Yに該当する具体的事実を主張したところ、被告乙は、要件Xに該当する具体的事実については甲の主張を認めたが(裁判上の自白)、要件Yに該当する具体的事実については甲の主張を認めなかった(否認)。

③要件Yに該当する具体的事実(←当事者間に争いのある事実)につき、甲と乙が証拠を出し合い、各証拠について証拠調べが行われ、甲乙双方、提出できる証拠が尽きた。

④要件Yに該当する具体的事実の存否につき裁判所が真偽不明状態に陥った。

⑤この場合、裁判所としては、Zという法律効果が発生しないことを前提に判決を言い渡すことになる。

以上が「証明責任」の機能の仕方です。

次に、この「証明責任」を原告・被告のどちらが負うかについてのルールですが、まずは原則論としての法律要件分類説(通説)を押さえてください。この法律要件分類説の内容はとてもシンプルです。分かりやすくていいですね。ざっくりいうと「ある法律効果の発生が有利に働く側(発生すると嬉しい側)が、その法律効果の発生のために満たすべき要件に該当する具体的事実(主要事実)につき証明責任を負う!」ということです。

この法律要件分類説に従った場合と結論が逆転してしまう例外的なケースを試験対策上は記憶しておくべきでしょう。ファイナル編第4回でいうと第3問の肢オ(暫定真実)などがこれにあたります。

最後に、冒頭で述べた「証明責任って証拠を提出する責任ですか?」→「そうではありません」について付け加えておきます。先の原告甲・被告乙の事例で、法律効果Zは原告甲にとって有利な法律効果ですから、法律効果Zの発生のために満たすべき要件Yに該当する具体的事実(被告乙が否認した具体的事実、当事者間に争いのある事実)の証明責任は原告甲が負うことになりますが、証拠の提出自体は甲・乙双方が可能です。ただ、証明責任を負う甲は、要件Yに該当する具体的事実について裁判所に確信をもってもらえるレベルまで証拠の提出を頑張らなければならない(そうでないと法律効果Zが発生しないことを前提に判決が言い渡されることになる)のに対し、証明責任を負わない乙としては、要件Yに該当する具体的事実について裁判所が真偽不明状態に陥ればそれでOKなので、証拠の提出もそのレベルで頑張れば足りるということになります。

以上です。頑張ってください。

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