【難易度 易 ファイナル編第5回との関連性あり】

ファイナル編第5回のご受講、お疲れ様でした。今回は記述式におけるちょっとした工夫のうちの1つについて述べたいと思います。吉澤クラスの受講生の方には口すっぱく申し上げている点でございます。「そんなの当たり前だ!」という方もいらっしゃると思いますが、しばしお付き合いを・・・

ファイナル編第5回商業登記法記述式の問題においては、いわゆる会計監査人の再任みなしにより、その重任登記を申請する必要がありました。この「再任みなし→重任登記申請」という流れ自体は、ある程度学習を積んでいる方であれば誰でも「知識として持っている」ことと思います。

しかし、「知識として持っている」ことと、「解答用紙に書くことができる」こととは次元が異なる、それこそが記述式の持つ大きな特徴です。「内容的に難解な点につき書けなかった(間違えた)」としても大勢に影響はないです。受験生として最も避けるべきは「書けたはずなのに書けなかった」なのです。「最低でも基準点クリア」、これを目標とするならばなおさらです。

偉そうに話しておりますが、わたくし吉澤も、受験生時代、会計監査人の「再任みなし→重任登記申請」については答練・模試で何度も書き忘れました。皆さんは今回のファイナル編第5回において、しっかり書けましたか?

そもそも何故、会計監査人の「再任みなし→重任登記申請」は書き忘れることが多いのでしょうか。それは、「冒頭の登記記録で情報が与えられたが最後、問題文中に一切情報が出てこない」からです。すなわち、冒頭の登記記録で会計監査人の存在とその就任年月日が情報として提供されたが最後、その後に続く議事録や聴取記録において会計監査人に関する情報が一切出てこないことが多く(ということは会計監査人のことに頭のアンテナが向かない)、その結果、実際に解答用紙に書く段階では会計監査人のことが頭の中からスッポリ抜けてしまっている、これが原因です。この原因自体は多くの受験生が気付いてらっしゃるところかもしれません。では、同じミスを繰り返さないための対策を講じてますか?ただ漫然と「以後気を付ける!」ではダメだと思います。なぜなら、記述式1問に含まれる情報量は莫大であり、次から次へとその莫大な情報が頭に流し込まれ、それを使って様々なことを検討しなければなりません。このような状況を前提とすると、はじめの5分くらいの段階で接した情報なんて30分後には頭の中に残ってないのが通常です。われわれは人間でありPCではないのですから。

ちなみに、この「再任みなし→重任登記申請」と同様、頑張ってきた受験生を一瞬にして奈落の底に突き落とす「死神」のような存在は他にもあります。「新株予約権の行使期間満了」や「買戻期間満了」などが有名どころでしょうか。

以下、これら記述式における「死神」のような存在への具体的な対応策について、「再任みなし→重任登記申請」を例にとり、時系列に沿って述べます(簡単なので誰でもできます)。

①「冒頭の登記記録から会計監査人の存在に気付く」

不動産登記法にしろ、商業登記法にしろ、記述式の問題を解く際には、冒頭の登記記録(商業登記法についてはプラスで定款又は定款抜粋)から初期設定を把握するところから始めることと思います。

②「気付いたらすぐ動く

「答案構成用紙中の、ボールペンで書き始める前に必ず目を通すと決めた場所(ちょっとした狭いスペースでOK)」又は「解答用紙の上部余白」などに、すぐさま略語で(「重」とか「会監」とかなんでもいいです)書き込みをする。ポイントは、「気付いたらその場で」「あとで必ず見ることになる場所に」書き込むということです。いわば30分後の自分に対するメッセージですね。「解答用紙の上部余白」に書き込みをする場合は鉛筆で書く必要がありますし、提出前に消す必要もあります。いずれにしても「自分の中でのルール」を確立する必要があります。

③「解答用紙にボールペンで書き出す前に当該場所に目を通す(又は当然に目がいく)」

これにより、「再任みなし→重任登記申請」の書き忘れを防止できます。時間なんてかかりません。

以上は、「新株予約権の行使期間満了」や「買戻期間満了」などでも使えます。冒頭の登記記録を見た際に、ストーリーの途中で期間が満了するなと思ったら、「すぐ動く」ということです。ただ、事例によっては、例えば行使期間満了前に新株予約権全部が行使された場合のように行使期間満了の登記を申請しない場合もあるので、ご注意ください。

なお、上記「答案構成用紙中の、ボールペンで書き始める前に必ず目を通すと決めた場所(ちょっとした狭いスペースでOK)」又は「解答用紙の上部余白」などに「何を」略語で書き込みをするかについては、日々の学習の段階で予めピックアップしておくべきでしょう。個人的には、上記「死神」のような存在レベルのものに限定すべきだと思います。いずれにせよ、答練・模試などで何度も試してみて、ルーティーンワーク化させる必要があります。

以上です。頑張ってください。

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