【対象者:初学者】

抵当権の処分(転抵当、抵当権のみの譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄)については、民法択一で計算問題が出題されるか否かを問わず、基本的な事例についての計算方法をマスターしておくべきでしょう。なぜなら、計算ができてはじめて当該処分の意味が分かり、それが不動産登記法における利害関係人の判断に直結するからです。

そして、その計算方法は極めて単純明快であり、1度マスターしてしまえば、万が一民法択一で計算問題が出題されても問題なしです。逆に「やったー!」と思えます。それが共同抵当の複雑な事例との差です。

以下、BTの図表に挙がっている事例【1番抵当権者A(被担保債権額1000万円)・2番抵当権者B(被担保債権額2000万円)・3番抵当権者C(被担保債権額3000万円)・無担保債権者D(債権額4000万円)・担保不動産の競売代金5000万円】を前提とします。

まず初めにやることは「もし抵当権の処分がなされてなかったら、誰にいくら配当されるはずだったか?」を計算することです。上記事例ですと、Aに1000万円・Bに2000万円・Cに2000万円です。【この額を、ここでは配当額(仮)と呼ぶことにします。】

次に、後順位抵当権者が処分の受益者となる抵当権の順位の譲渡・放棄については「処分者への配当額(仮)と受益者への配当額(仮)を合算」します。事例によっては、受益者への配当額(仮)は0円の場合もあり得ます。

最後に、転抵当・抵当権のみの譲渡・放棄の場合は配当額(仮)を使って、抵当権の順位の譲渡・放棄の場合は配当額(仮)の合算額を使って、処分の仕方に応じ、現実の配当額を計算します。例えば、AがCに抵当権の順位の放棄をした場合であれば、配当額(仮)の合算額である3000万円(1000万円+2000万円=3000万円)を、1番抵当権の被担保債権額(1000万円):3番抵当権の被担保債権額(3000万円)=1:3でもってAとCで分ける、ということになります。

いかがでしょうか。やることはとてもシンプルです。「もし抵当権の処分がなされてなかったら、誰にいくら配当されるはずだったか?」を計算するところから始めるクセをつけると良いでしょう。この「もし抵当権の処分がなされてなかったら、誰にいくら配当されるはずだったか?」の計算は、言い方を変えれば、いわば「抵当権ごとの取り分」を計算しているのと同じです。抵当権の処分がなされると、その「抵当権ごとの取り分」が抵当権者自身には配当されなくなる(もしくは配当額が少なくなる)というイメージです。仮に上記事例で3番抵当権者CがXのために転抵当権を設定し(被担保債権額1500万円)、Yのためにも転抵当権を設定した(被担保債権額1000万円)とします(付記登記の先後関係はX>Y)。この場合、Cへの配当額(仮)3番抵当権の取り分である2000万円をX>Y>Cの優先順位で分けるだけの話です(Xに1500万円、Yに500万円、Cに0円となります。)。「3番抵当権の取り分である2000万円を、3番抵当権の関係者(X・Y・C)間で優先順位に従って分ける」というイメージです。

過去問で出題された計算問題を何度かこなせば、必ずマスターできます。頑張ってください。

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