よく受講生の方からご質問を受けるのが、根抵当権の学習で出てくる「根抵当権が全体としては確定しない」の意味についてです。

例えば、根抵当権の債務者が複数存在し(共用根抵当権)、その複数債務者の1人についてのみ相続が開始した場合,指定債務者の合意の登記をせずに6か月が経過したときであっても,根抵当権は「全体としては」確定しません。ということは、「部分的には」確定するということです。

すなわち、根抵当権者がⅩ、債務者がA・Bである根抵当権について,Aについて相続が開始し,指定債務者の合意の登記をしないうちに6か月は経過した場合は、相続開始後にXとAの相続人との間でなされた取引により生じた債務は当該根抵当権によって担保されることはなく、「Aが相続開始時に負担していた債務で相続人が相続する債務」だけが当該根抵当権で担保される債務として確定します。他方で、XB間でなされた取引により生じたBの債務は、Aの死亡後に生じたものであっても、依然として当該根抵当権により担保される債務群に入ってきます。

イメージとしては、「上下2段のタンス」で良いかと思います。上がAのタンスで下がBのタンスです。Aについて相続が開始し,指定債務者の合意の登記をしないうちに6か月は経過した場合、上のタンスはA死亡時の状態のままロックされ、下のタンスは生きているBが引き続き衣服を出し入れする(債務を弁済したり、新たに債務を負ったりする)というイメージです。

根抵当権は、一度マスターしてしまえば大したことないです。頑張ってください。

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