本ブログにはLEC2022年向け精選答練【ファイナル編】第1回に多少関連する情報が含まれておりますので、受講前の方は受講後に閲覧していただければと思います。
本ブログの難易度:前半は難 後半は普通 前半は受験対策上無視でOKです!
精選答練【ファイナル編】第1回のご受講お疲れ様でした。本答練の商業登記記述式の問題・解説の制作に少し関与いたしましたので、それを通じて考えたことを述べてみます。
前半のテーマは、「会322Ⅰ①括弧書」です。
会322Ⅰは、種類株主総会決議を要する会社の行為を列挙してますが、その1号において、「次に掲げる事項について定款の変更(第111条第1項又は第2項に規定するものを除く。)」とされてます。
会社法上、種類株主総会決議を要求する規定は会322条の他にもあります(会111Ⅱなど)。この会322とそれ以外の規定との関係について、個人的には(あくまで個人的にです)、一般法と特別法的な関係で捉えてます。すなわち、「一般法」である会322が「種類株主に損害を及ぼすおそれがあること」を要件として種類株主総会決議を要求し、加えて、「特別法」である会111Ⅱなどにおいて、「通常、種類株主に損害を及ぼすおそれがあるだろ」と思われるケースをピックアップし、そのようなケースについては「種類株主に損害を及ぼすおそれがあること」を要件とせずに種類株主総会決議を要求している、といった感じです。
で、本題ですが、例えば甲種類株式と乙種類株式を発行している会社において、定款変更を行い、乙種類株式に対して新たに全部取得条項をを設定する場合(甲種類株式は乙種類株式を取得対価とする取得請求権付株式・取得条項付株式ではないものとします。)、甲種類株式について、会322の種類株主総会決議の要否は問題になるのでしょうか?
この問題は、先に掲げました「次に掲げる事項について定款の変更(第111条第1項又は第2項に規定するものを除く。)」中の「もの」が「定款の変更」を意味すると考えるのか、それとも「種類株主総会決議」を意味すると考えるのかによって結論が変わってくるように思います。すなわち、「もの」が「定款の変更」を意味するなら、上記ケースにおおいて甲種類株式について会322の種類株主総会決議の要否は問題とならない(そもそも会322は適用除外)ということになるでしょうし、「もの」が「種類株主総会決議」を意味するなら、除外されるのは会111Ⅱが掲げる3つの種類株主総会決議のみということになるので、甲種類株式について会322の種類株主総会決議の要否が問題となるということになるでしょう。
この論点につき明確な結論を示してくれている文献に吉澤は出会えておらず、結論がぼかされているものが多い気がします(ですので受験対策上無視でOKです。)。会322括弧書の文言を重視するなら、「もの」は「定款の変更」を意味すると考えるべきでしょう。他方で、全部取得条項付種類株式の取得対価が金銭であるような場合を想定すると、その取得には「出資の払戻し」的な要素が含まれてくるので、全部取得条項が設定されない方の種類株主に損害が及ぶ可能性があることもありうる、との側面を重視するなら、「もの」は「種類株主総会決議」を意味すると考えるべきでしょう。問題の作られ方としては、前者で考えようが後者で考えようが種類株主総会決議の要否について差異が出ないように注意書きなどが挿入されるはずですのでご心配なく。
後半のテーマは、商業登記記述式における種類株主総会決議の要否についての検討の仕方です。
まず、問題となっている行為について、322条「以外」を根拠条文とする種類株主総会決議が必要とならないかを検討する。「必要」ならば、当該行為に関する当該種類株主総会決議の要否については、検討終わり!
「不要」となる種類株式については、322条の種類株主総会決議の要否の検討をする。その際は、①「問題となっている行為が会322Ⅰが列挙している行為か否か」②会322Ⅰが列挙している行為だとしても「322Ⅱの定款規定(種株不要規定・登記事項である)により不要とならないか」(登記記録を確認!)③322Ⅱの定款規定が無い会社だとしても「損害を及ぼすおそれがあるのか」、この順で検討を進めるとよいでしょう。
本試験まで、残り約3か月です。くれぐれも身体を壊さぬよう・・・
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