先日講義中にも触れたので講師ブログでも良かったのですが、備忘録として実務コラムとして記載いたします。今年の5月にたまたまタイトルにある登記申請をする機会がありました。今年の4月から可能になった訳ですが、法定相続分での相続登記完了後に遺産分割協議がなされ、例えば相続人のうち1人が単独で承継すると決めた場合、今までは「遺産分割」を登記原因とする「持分全部移転」の申請をすべきでしたが、「遺産分割」を登記原因とする「所有権更正」の申請が可能となりました。相続関連の登記手続を簡略化することによって登記申請の促進を図るという近時の一連の改正・運用見直しの一環です。実体法的な側面からいうと、遺産分割がもっている遡及効は第三者保護規定(民909但書)があることからも相続放棄と比べると中途半端なものですが、「所有権更正」を認める上記運用の見直しは、遺産分割の遡及効を重視するものといえるでしょう。以下、「持分全部移転」によった場合との差を簡単にまとめます。

①「登記権利者による単独申請が可能」

ここでいう単独申請は名変登記申請のような本来的な単独申請ではないので、判決による登記申請などと同じく登記義務者の住所・氏名も申請情報とする必要があり、登記権利者の氏名の前に(申請人)を付記する。

②「添付情報は登記原因証明情報と代理権限証明情報のみ」

①と関連する訳ですが、当然添付情報が簡略化されます。登記原因証明情報としては遺産分割協議書及びその遺産分割協議書に押された実印についての印鑑証明書、代理権限証明情報は登記権利者からの委任状のみです。結局登記義務者の印鑑証明書が必要となってしまいますが、「遺産分割」を登記原因とする「持分全部移転」による場合と違って、3か月制限が無いですし原本還付も受けられます。

③「登録免許税が不動産の個数×1,000円で済む」

これがでかい!課税価格×4/1000を納める必要がありません。

以上、備忘録でした。

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